モキ製作所MD80Ⅱ(iGブースターモデル)レビュー【旧愛研当時】
薪ストーブはもう薪ストーブ以外の暖房には戻れない
一度炎のある暮らしをするともう虜になります。以下、2017年11月末から3月末まで4ヶ月間薪ストーブを使った感想です。
まず、我が家の立地条件や薪ストーブ設置までのプロセスを簡単に紹介します。 我が家は周囲に学校、民家、近くにコンビニとごくごく普通の住宅地です。新築を具体的に考える時に薪ストーブを一緒に入れたいと思っていました。我が家は夫婦共働き、当時子ども0才、2才という環境下での周囲の反応は、
- 父→薪ストーブなんて忙しくて出来るわけがない、老後に時間にゆとりがあってこそのものだ!
- 母→当然煙突から煙が出るから住宅地では無理だろうしご近所さんにも迷惑だ!
- 妻→そもそも薪ストーブいらない派で、石油ストーブが大好きで、それに薪ストーブ本体&設置費用がもったいないとの発言!
と周囲の反応は散々でした。自分自身の薪ストーブの思いももう一つ足りなく、周囲の反応もよくないので 結局、新築では薪ストーブを設置しませんでした。
導入のきっかけ
2016年夏に新築引き渡しがあり、夏、秋と快適に過ごしていましたが、11月の半ば頃そろそろ冬の到来を前に夜リビングでテレビを見ていました。NHKでアニメ監督宮崎駿のドキュメンタリーを見ていた時、監督の自宅かアトリエに薪ストーブがあり、監督がインタビューに答えながら何気なく薪ストーブに着火というシーンがありました。
その時、薪ストーブが我が家に必要だという思いが私の中にも着火してしまいました(笑)この番組がこれからの薪ストーブライフの始まりになっていきます。
なぜ愛研の大屋さんを指名したか
インターネットで薪ストーブ情報を調べ始めるとすぐに愛研K様邸物語(弊社過去HP)にたどり着きました。やたらと長い文章でしたが、個人の方の薪ストーブ導入のストーリーがわかりやすく綴られていました。そこからは愛研の大屋さんの論文並みの膨大なしかし非常に説得力のある情報を楽しく読んで薪ストーブについての知識を得ていきました。
インターネットでは情報という名のノイズに真実は隠れてみつけにくいですが、大屋さんの文章は理屈と理論に裏付けされた確かな情報だと判断しました。
また、薪ストーブを既存の家屋に後付けするにあたり大切な点にしっかり触れられていますし、家を毀損しないことを最重要項目の一つに挙げられているので信用できる方達であると思いました。
愛研大屋さんがユーザー側に立たれて商売をされている点、K様物語登場のM工務店社長が幅広い知識と確かな技術を持たれている点、設置をするならここしかないだろうと決めました。
家庭内の諸事情により一年後(2017年10月~11月)に設計&工事
一度お二人に見積もりに来ていただき薪ストーブ本体をどこに置くかを相談させていただきました。煙突ラインについては完全にお二人にお任せしました。
炉台や炉壁については色々思案しましたが結局シンプルな仕様(サイズは特注)にしました。この判断が出来たのは以下の情報が大変参考になりましたし、大屋さんから電話やメールでアドバイスを受けながら決定しました。(大屋さんはこちらのニーズを読みながら提案してくださるので、結果としてユーザーの満足度が高くなります。)
我が家を建てた工務店はこだわりの構造で壁中が珍しい複雑な構造ですが、M工務店社長の事前の緻密な計算のもとでの工事をしていただき設置完了まで終始大変安心していられました。 また煙突を壁出しにしましたが、外の煙突と壁を支える金具もオリジナルで作っていただきました。
期待した効果や結果と気付いたこと
想像通というか期待以上に暖かい快適空間が作れました。エアコン暖房や石油ストーブとは違う暖かさである事についてはここでは割愛します。以下家族たちの反応です。
- 4才の娘→天板で焼いたホットケーキを食べて 「父ちゃん薪ストーブ入れて本当によかったよな。」と美味しそうに言っていました。
- 2才の息子→火がついているのが楽しいようで、いつも火ボーボーと言って喜んでいます。 炉内に木を入れる事も楽しんで手伝いをしてくれます。
- 妻→鍋ややかんを自然と天板に乗せ料理をして薪ストーブを生活の一部にしています。(当初は薪ストーブ導入反対派でした。)あんなに反対していたが、今では少しでも寒いと薪ストーブをつけようと言ってきます(笑)
- 父→実際に我が家の薪ストーブを体験して父も自宅に欲しくなったらしいです。
- 母→それほど興味がないのか今でも反応は薄めです。
高温になる薪ストーブから心配される子どもの安全面
現在子どもは3才前と4才半です。我が家は薪ストーブの周りにハースゲートを当初から設置していませんが、火がついている薪ストーブは子どもにとって意外と危なくないと感じています。目の前に危険(輻射熱)がある事を本能的に感じていて上手に薪ストーブと距離を取りながら部屋で遊んでいます。(ただ、家の中を走り回っている時は声をかけますが。)
立ち上がりの速さが圧巻
圧倒的に立ち上がりが早く、先日データをとってみると10分弱で天板温度は250℃、20分弱で450℃でした。我が家は、8畳の吹き抜けを含む間取りで、各部屋を細かくドアで仕切らないほぼ全館暖房状態ですが、焚き付けも含め1時間も焚けば十分暖まってきます。(吹き抜け上部のシーリングファンを回します。)
他機種との比較
正反対の性格でソープストーンという石で出来たストーブがあります。私の知人が所有していますが、簡単に言うと立ち上がりはゆるやか(薪ストーブ本体が温まるのは遅い)ですが蓄えた熱をゆっくり優しく放出するという特徴があります。
正直申しますとモキを導入しながら知人が所有しているソープストーンの薪ストーブ(蓄熱量が大きい事)がとっても羨ましかった時がありました。知人は室内で犬を飼っていて外出していても何時間かおきに自宅に帰り薪を補充してストーブ本体の熱を絶やさず、室内温度をある程度保ち愛犬を寒さから守っているようです。要するにほぼ24時間暖房をしているわけですが「24時間家が暖かい、なんてすばらしい」と思いました。
ただ24時間とはいかないまでも我が家のように朝晩2回薪ストーブを使ったとしたら薪の消費量はモキの2倍かもしれないし、立ち上がりの遅さを考えると我が家のようなスタイルには全く合わないだろうと考えすぐに気持ちはモキに戻ってこれました。
ほとんど家で過ごしたり仕事をしたりする人、ある程度家にいるような人、薪も潤沢に用意出来る人はこのソープストーンというストーブの方があっているのかもしれません。
しかし、住宅地で実際には薪のかさが2倍になると家の周囲の景色が大きく変わってきます。我が家も薪棚を作りましたが普通の住宅地の戸建で鋳物や上記の石のストーブを選択すると家の周囲が薪棚、薪だらけになって大変な事になってくると思います。
薪ストーブの薪消費量が2倍=薪棚も2倍のスペースが必要だと具体的に考えると燃費ってすごく重要な要素です。この点においてもモキは圧倒的なアドバンテージを持っている事がわかります。
また私はヒタという会社のインスパイア55の炎を薪ストーブ店で見た事がありますが、二次燃焼をしていてそれはそれはとても綺麗な炎がゆらめいていました。あまりにも炎が綺麗でデザインもスタイリッシュで洒落ていたのでモキを導入予定にしている事は無かった事にしてインスパイアを買いそうになったほどです。(笑)
しかし、モキ&iGブースターの炎は一枚も二枚も上手で様々な表情をみせてくれます。
モキ&iGブースターは炎が綺麗で美しい
木の種類、薪の置き方、薪の量等によって炎の表情が様々に違います。モキは奥行きがかなりある為、例えばガラスに近い手前は赤々と燃え炉の奥の方ではオーロラのように青く燃えるなど小宇宙かと思えるくらい不思議で幻想的な世界ができあがる時もあります。
モキ&iGブースターの評価できる点
例えるなら、ビックパワーが出るエンジンを載せながら(どんどん部屋を暖めたい時)すごく車重の軽いスポーツカーくらい小回りが利く走行(まるで囲炉裏のようなチロチロと燃える小さい炎)もできます。
ビハ!iGブースター
炎がノーマルとは全く別物に変化。大出力運転での炎の美しさ(詳しくは大屋さんのブログで紹介されています。)はいうまでもなく3月に入り気に入っているのは中出力、低出力運転です。チロチロと穏やかに燃やす事ができこんなに美しい炎は心を安らかにさせてくれます。
薪ストーブのプロの方や薪ストーブを長く使って見える方の情報によると、薪ストーブは「大は小を兼ねない」らしいのでここでもモキ&iGブースターは万能な性能を発揮することが分かります。
モキ&iGブースターの課題点やデメリット
iGブースターでは写真のような太さの薪を多く用意する事が勝利への最短距離です。
しかし、太い薪は思ったよりもなかなか燃えないのでちょっと細めの木で太い木の燃焼をサポートさせる必要があります。 また、熾火がなくなるとストーブ本体が冷めるのがわりと速いです。(その頃には室内は十分あたたまっていますが。)
iGブースターを外したら
圧倒的なドラフトにより焚き付けが楽すぎます。なんでもかんでも燃えていく印象で、とっても太い薪もどんどん燃えていきました。表面温度の高い所(背面)では600℃にもなり室内温度もみるみる上昇していきました。
iGブースターから入門した私には毎日使うには少々扱いづらいという印象ですが、短時間で炎のケアなしで部屋を暖かくしたい時はブースターなしの方がいいかもしれません。
アフターフォロー
愛研大屋さんには薪ストーブ設置後も分からない事があれば丁寧に教えていただけますし、先日は煙突掃除をする際にわざわざ来ていただきました。薪ストーブ設置後も変わらずユーザー目線で親切に対応していただけるのもとても心強いです。
モキユーザーからの提案
共働なスタイルの方はすごくあっています。立ち上がりがすごく速い為、超忙しい朝でも、帰宅後のバタバタした中でも気楽に使えますし戦力になります。もちろん広い天板の上で昨晩の味噌汁を温めたり、コーヒーの湯を沸かしたり、カレーを煮込んだり、簡単な網を天板にのせてその上で食パンや餅を焼いたり、たまには炉内で魚を焼いたりと日常に溶け込んだ使いやすさです。
重要なおまけ
薪ストーブショップで薪ストーブに火がついている時は暖かいのは当たり前です。出来る限り候補に入れたストーブの立ち上がりのスピードや火が消えた後の熱の放出具合などなどを実際体感して(ショップや知人を頼って)ご自分のライフスタイルに合った薪ストーブを選択してください。(薪ストーブのデザインや薪ストーブ店のお勧めなどで選択しない方がいいと思います。)
長くなりましたが、今回導入したモキは「今後も長く楽しく使っていきたい。」 そう思える薪ストーブです。 最後に大屋さんをはじめM工務店さん、その他関わっていただいた方がたくさんいらっしゃいます。ありがとうございました。
愛研大屋による長い長いあとがき解説
弊社ユーザーさんであるEさんに特にお願いして執筆いただき、例のごとく、一言一句変更することなく(体裁の整えはやりましたが)、原文そのままで掲載させていただきました「ユーザーさんレポート」、お楽しみ頂けましたでしょうか?
さて、環境調査会社を母体(本業)とする本事業及びWebサイトは、「真実を発信すること」を、何よりも大切なこととして展開しております。しかし、当初からの悩みどころは「モキ製作所の薪ストーブ(ノーマルMD80Ⅱ)のある暮らし」についてはK様ご夫妻によるご感想があるものの、「愛研が扱うモキ製作所」に特に着目した、当事者以外の方による「評価」(批判も含めた客観的なレビュー)が、ほとんどないことでした。
正直に、あえて申し上げますと、巷にあふれるモキ製作所の薪ストーブの「悪評」にも「結果的には真実となりえる」部分が多々あります。あたりまえ。いくら高性能とはいえ、こんな「とんがった」薪ストーブを、不充分なフォローで売れば、そりゃ「こんなはずじゃなかった」という不幸が生み出されてしまうこともあるでしょう。
例えば、モキMD80Ⅱ(ノーマル)を、普通の薪ストーブのように、断熱二重煙突の直管屋根抜き「ダンパーなし」で設置したら、どんな「悲劇」が待ち受けているか……私からしたら、想像するだけでも恐ろしいことです。
ただ、理論やノウハウを含めてちゃんと提供できれば、これ以上に高性能で便利に(メンテナンスや寿命、それぞれのユーザーさんの置かれた状況への対応の幅広さも含めて)使える薪ストーブはないと私、愛研大屋は確信しています(今のところ、ですが、たぶん将来も難しいかと)。ですので
「モキってどうなんだろう?」と比較も散々やって悩まれて、しかも勇気を持って(?)愛研大屋にご依頼頂いた方が、実際に導入してみてどうだったのか??
……ということに、ウソ偽りなく言及した、私以外の方によるレビューが、本事業及びWebサイトの趣旨「真実の発信」に照らして、どうしても、欲しかったのです。
ですので、この「大変な」レビューをお願いする方として
- モキ製作所以外のメーカーと、自ら充分比較した末に決められていること(要は、「モキ最高」という私をちゃんと疑っていること)
- 業者についても比較検討して「愛研大屋」を特に指名していること
- ご自身の選択の成果について、他社の事例等も踏まえて評価可能であること
そして何よりも
- 私に遠慮することなく、悪いところも正直におっしゃってくれること
これをすべて満たすユーザーさんに、レビューをお願いする必要がありました。
実は、今回のレビューを書いていただいたEさんの他に、お願いしようと前々から決めて、実際にお願いもしていた本命のユーザーさんがいらっしゃいました。すごく心優しいのに、とてもお茶目で、耳の痛いご意見もしっかり届けてくれる方でした。ところが、その方はご家庭の一大事によって愛研大屋どころではなくなりました。
その方は、ものすごく責任感も強い方なので、レビューの持つ意味もよくわかって頂いて「書きます」と約束して頂いた以上、私が連絡とかすれば「なんとかしなきゃ」と絶対に無理をされることは私には目に見えていました。それはなんとしても避けたかったのです。目の前の、もっと重要な課題に安心して全力投球して頂きたかった。そこで、代わりの方に、できるだけ早く書いて頂いて実際にレビューとして公開したいという裏事情まであったのです。
そんな私に、「お願いするならこの人しかいない!」と密かに白羽の矢を立てられてしまったのがEさんでした。Eさんは、とても柔らかな感性に加え、真摯な(しがらみや経緯に流されない)判断と率直さ、そして何よりも茶目っ気をお持ちでした。このあたりは本人もお書きになられたインスパイア55の下りで
『実際に見た炎の美しさがすごく魅力的なので、大屋さんにはお願いしたいですと言っていたのに本当に申し訳ないですが、そちらに変えようかと思っているんですけど、大屋さん、そのあたりってどうなんでしょう?』
……と、炎の美しさ以外の各項目も含めて、実に率直にご相談頂いて(お電話でしたが、言いにくかったでしょうに(笑))、私も実際にインスパイア55の動画も見て「これなら勝てます、大丈夫です」と断言したけど、まだiGブースターの炎の動画もほとんど公開されてなかった頃ですので、早く動画を公開してウソではないと安心してもらわないと……とか、かなり焦ったり、というか、実際には本当に楽しく対応させていただきましたので、Eさんの正直でお茶目なお人柄もよく存じ上げていたのです。
そんな「自分が欲しいもの」に真摯な、また、とても色々と調べられるEさんが(私もEさんの「こんなのありましたよ?!」という薪ストーブにまつわる各種情報に、ものすごく勉強(ブラッシュアップ)させて頂きました)、結果的に1年間も悩むことのできる時間を持たれた末に、私のユーザーさんになっていただけたわけです!
そのような、普通はまずない状況に「この人なら!」と……でも、あまり、そういう事情は申し上げずに「モキってどう?愛研ってどう?って、検討した内容や結果まで書かれた情報が、世の中にはほとんど存在していなくてですね……Eさん、実際のところを、書いていただけませんか??」と、断られたらどうしようと内心、祈るような思いで思い切ってレビューをお願いしてみたところ……
「いや……僕なんかでよろしければ(笑)」とご快諾頂き、書いていただけたのが、このたびのレビューだったわけです。読ませて頂いて、本当にびっくりしました。
想像以上、まさに期待以上。指名頂いたきっかけが「K様物語」や「専攻課程」からの流れだったとは、実は存じ上げなかったのですが、特に「専攻課程」は当時「薪ストーブを買うのに、こんなの読む人誰もいない」と酷評されながらも、真実ではあるので、誰にも読まれなくても、まあWeb上に残しておこうと思っていた程度でしたので、ここだったのか!と、Eさんの調べる力に改めて驚いたのと……
何よりも、ユーザーになろうとする方なら気になる、知りたいだろう一連の情報が、とりわけ、私自身も書くのが難しいなと思っていた「iGブースターとノーマルの差」に至るまで、まさに使う側の立場から、機種選定で失敗しないための忠告も含めて、ここまで網羅的かつ客観的に書いていただけるとは!!!
私が言うのもなんですが、薪ストーブを検討されていて、もし愛研にモキを頼んだら、どうなんだろう?という疑問に対して、こんなに役に立つ情報は、本事業Web発信でも、かつてなかったものと思います。愛研を抜きにしてモキ製作所のストーブに関する数少ない情報としても、きっと、ご参考になるものと思います。
あと、レビューの中ではiGブースターについて、ずいぶん高評価を頂きまして、とてもありがたく思っております。レビューの中で挙げていただいたiGブースターのメリットにつきましては、ブログで、まさにその部分について解説している記事がありますので、以下、もっと知りたい場合の便宜のためにリンクを紹介しておきます。
- 大出力だけでなく小出力でも使える便利さ「守備範囲の広さ」についてはこちらの記事→『薪ストーブ本体の選択において求められる「一番重要な性能」って何かご存知ですか?』
- 穏やかな炎の美しさと、穏やかな炎を安心して楽しめる価値についてはこちらの記事→『【番外編※MD80Ⅱ限定】薪を超少なくしても美しい炎が楽しめる幸せ』
特にチロチロと穏やかに燃える炎の美しさは、iGブースターモデルならではの、超絶贅沢な価値です。これを「価値」として評価される人と、またいずれブログに書きますが「薪ストーブの本質的な価値でない」と看過される方と、私は両方の考え方がよく分かりますが、私はこの「価値」が大好きなので、そこはEさんと同じ人種なのかなと思います(笑)。
なお、立ち上がりの速さなど、モキ製作所の薪ストーブの一般的なメリットについては、すでに散々言い尽くした感がありますので、例えばこちらのデータや、こちらの実録チャレンジのレポート、あるいはこの実録チャレンジでの数値を時系列にまとめたこちらの動画への問い合わせコメントをご参照ください。
最後に……実際に幸せを手に入れるための別れ道
ここまで、結果的に、悪いところはないように書いてきましたが、では、愛研大屋に頼んでモキ(iGブースター)を入れれば、必ず幸せになれるのかと言いますと、残念ながら、そういうわけでもありません。
「生き物」の命を頂く、料理をイメージして頂くと近いかと思います。料理の道具(薪ストーブ&煙突設置)は良いものを揃えた、道具の使い方も習った、ナマモノ材料(薪)の目利きも教わった……では、実際に、失敗なく、思ったような美味しい料理がいつもできるか??といえば、答えは「ノー」です。
実際の話はそう簡単ではないし、偉そうなことを言っている私も、実際の場面での運用ノウハウを十分お伝え出来なかった未熟さから、ユーザーさんに失敗や悲しい思いをさせ、激しいお怒りを頂戴した経験も実際にあります。
とりわけ「格別に美しい炎」を味わう「iGブースターモデル」では、通称「2段目」ないし「ステップ2」という、徹底的によく乾いた細薪が必須です(上記レビューで「勝利の近道」としてEさんにも言及頂いているものです)。本質的なポイントは「本体の温度をいかにスムーズに上げるか」。詳しくは以下のブログの記事、導入後でも構いませんから、どうか必ずお目通し下さい。
このスムーズな立ち上がり、本体の温度を速やかに上げてやることこそ、薪ストーブを実際に使う上での最大の悲劇をもたらす要因である「煙」「臭い」に対する最大の防御でもあります。理論的には。
しかし、言うは易く行うは難し。Eさんも、次のようなことをおっしゃっていました。
『焚きつけから温度を一気に上昇させるにはノウハウも必要だったし、何より乾いたステップ2の木がかなりたくさん必要でした。キンクラで生産性は上がりましたがステップ2作りは面倒くさい作業でもありました。ステップ2の在庫が危ない時や、雨やなんかで湿ってピンチな時は立ち上がりがもたつき煙も長い間出たり、立ち上がりがもたつくと負の連鎖でその日はずっと燃焼の調子が悪いとかありました。焚きつけに乾いた細い目の木をジャンジャン入れ、その後も乾いた程よいサイズの薪を燃やせればいいですが、いつもそうとは限りません。テクニック、ノウハウと並列して街中で薪ストーブを使うには「下準備をした薪や薪を濡らさないような場所が大切」というのが今シーズンの感想です。』(レビュー原稿に添えられたメールより抜粋)
柔らかな感性の持ち主であるEさんは、煙がご近所に迷惑になる可能性についても相当気になさっておられて、上記レビューで、私のアフターフォローについて言及頂いていますが、その内容の大部分が、立ち上がりの難しさと煙・ススの問題に関するものでした。煙突掃除に直接お伺いしたのも、ススがご近所に影響するご心配を確実に払拭するために、私が即対応することが必要と判断したためです。
要するに、何を言いたいかと言いますと、高性能薪ストーブ、弊社による煙突設計と施工納品、そしてEさんという極めて高い調査能力と理解力をもってしても、煙の問題をクリアーできるだろうという状態に実際にもっていくための具体的なノウハウを含む手順や日常手段を得ることは、実際には、難しかったということです。
『冬は北西風と西風で、9割は民家のない方向に煙や匂いは流れました。テクニックが未熟だったり、薪の用意がピンチな時も、この立地条件、西風に助けられたなと思っています。ご近所との普段の関わり、コミュニケーションも大切ですし、僕が手放しで「煙大丈夫ですよ」とは言うことはできません。』(レビュー原稿に添えられたメールより抜粋)
ですので、煙の問題で苦情をもらって使えなくなるとか「こんなはずではなかった」という悲劇に陥ることなく、実際に幸せを手に入れる別れ道としては、美味しい料理ができるようになるまでと同じく、不断の努力なり注意力なりによって、薪ストーブを思うように使えるようになるまで自分なりのノウハウを蓄積させること、そのハードルを超えるまで諦めない強い意思が、どうしても必要です。
私、愛研大屋は、ユーザーさんが実際に幸せを手に入れるまで、どこまでも寄り添いますし、諦めなければ幸せが手に入るということも保証します(もし保証できないと判断した場合は、申し訳ないですが、薪ストーブをお売りすることはできません)。しかし、私は一般論的な知恵やノウハウは提供できますが、ハードルを超えるための具体的なノウハウを含む手順や日常手段は、Eさんのように、どうしても「自分なりに」工夫して手に入れて頂くしかないのです。
ともあれ、ハードルを越えてしまえば、ものすごく大きなリターン、幸せが得られることは、お書き頂いたレビューのとおりですし、そこで、モキ製作所の薪ストーブが立ち上がりの早さということを含めた煙や臭いの点で、圧倒的なアドバンテージを持っていることは、様々なことから判断して「真実である」と私は考えております。ちなみに、Eさんに「そこに」水を向けましたら……
『煙突から煙は絶対に出ます。しかし、煙はノウハウ&下準備で極力少なくは出来ます。強みというか実話としては、燃焼がバッチリ上手くいくと(巡行燃焼で)煙も匂いも皆無に等しいくらい。青空の日曜日、白昼確認しました。モキは煙に関して断然優秀だと思いますよ?たぶん海外の鋳物ストーブに比べて圧倒的に煙は少ない方でしょう。けれど、実際に他メーカー他機種と比較した事がないので説得力がないですね(笑)』
……実に、おっしゃるとおりです(笑)長い長い「あとがき」となりましたが、おあとがよろしいようで!!
それでは本当に最後になりましたが、本来、いちユーザーさんに過ぎないEさんによる、これだけ詳細なレビュー、まさに力作、書くのも、すごく大変だったのではないかと思います。天性の努力家でもあり、とてもお茶目なEさんのこと、きっと楽しみながら書いていただけたのだろうとは思いますが、Eさんという本当に得難いユーザーさんとのご縁に、またEさんから多大なるご理解とご協力を頂きましたことに、心からの感謝を申し上げます。